Yield curve model with macro-economic factors

一般論からみると、金利を説明できる理論としては、マクロ経済学ファイナンスがある。

マクロ経済学IS-LMやAS-AD、それの拡張モデルでも)では、企業の投資が実質金利に依存するという前提の下、均衡での金利を論じる。では、この金利とは何を(特に、どの期間の金利を)指しているのだろうか? IS曲線側では、企業の投資活動への影響を論じているので、短プラ(銀行貸出の基準金利)ないしは国債金利社債の基準金利)を使っていて、期間としては中期・長期である。一方で、LM曲線が記述しているのは、人々が貨幣を所有したい願望(流動性選好仮説)に逆らって預金をするには、金利はいくらであるべきかということで、普通預金金利という翌日物の金利となる。

以上のように、標準的なマクロ経済学では、金利の期間構造というものを実際には考慮していない。


一方、ファイナンスでは、金利期間構造の説明として、(将来の短期金利の期待値)+(プレミアム)という形を採用する。この基本形で説明できない部分は、市場分断仮説というもので、結局は需給要因もありますと説明する。それでは、この将来の短期金利の期待値とはどのように求めるのだろうか? ファイナンスによくある解答は、なにか真の方程式(確率微分方程式)があって、この式をなにか適切な統計的手法を用いて推定し、積分することで解くことができるというもの(Duffie-Kan以降のaffine modelが代表的)。しかし、真の方程式が理論的にどういうものかわからない上、真の方程式どころか過去データに合うそれっぽい方程式に過ぎないものだ。


一方は、生産量・消費量・物価から理論的に金利を扱えるものの、期間構造を説明できない。もう一方は、期間構造を説明できるものの、その説明が経済的な理論に結びつかない。そこで、この2つの理論をハイブリッドすることから生まれたのが、Macro-Financeと呼ばれる分野だ。


2つのMacro-Finance modelのタイプ


Macro-Finance modelには、affine modelを利用するものと、Nelson-Siegel modelを利用するものと、2つのタイプが現在流行である。この違いは、マクロデータがどのように働くかで、解釈上の大きな違いをもたらす。

  1. affine modelではマクロデータは短期金利に働く。マクロデータの将来期待値がVARに従い、期待短期金利過程はTayler ruleに従って推移するとし、yield curve全体は(pricing kernelによって計算できる)債券価格から求める。これはTayler ruleや期待仮説と整合的になり、また現在の情報がVARに従って将来の期待を変化させるdynamics等、理論的には理解しやすい。
  2. Nelson-Siegel modelではマクロデータは、yield curveを構成する3つの成分それぞれに働く。これは方法として簡易である(単なる回帰!)ことに加え、イールドカーブの構成要素としてよく知られている、水準・傾き・曲率(あるいは、長期・短期・中期)の成分が、マクロデータによってどういう影響があるのかを理解できる。一方で、今の情報がどのように期待を動かし、最終的に金利を変化させるのか経済理論と整合的ではないように思う(そこには金利の期待仮説すら登場しない)。

テクニカルな面でNelson-Siegel modelを利用した場合に気をつけないといけないのは、VARによって異なる時点のデータを回帰させているが、金融データがショックに瞬時に反応する性質を表現するために、よい推定法を見つけないといけないことだと思う(例えば、Ang-Piazzesi(2003)は2段階最小二乗法を使っている)。